流行解説

【コロナ禍でどう変わる?】2021年春夏のファッショントレンドについて

 

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今回はコロナ禍におけるファッショントレンドの変化について解説
 

ファッション業界にも大きな影響を与えているコロナによって今後どう変わっていくのかをトレンドとビジネスの観点から考察してきます。
 

「家時間」をいかに充実させるか

 

まずコロナによるファッションの変化1つ目は

リラックスウェアが増えていく
ということ
 

これは誰でも想像がつくところだと思いますが、この傾向を特に強く感じたのが2021春夏ユニクロUのコレクション
ユニクロUはユニクロと元エルメスのディレクターであるクリストフルメールが協業してパリのユニクロチームが手掛けているコラボラインですね。
 


 

そのユニクロUが展開した今季のラインナップはいつもともかなり毛色が異なっているように感じました。
そうした変化を大きく感じたポイントの1つがリラックスウェアの増加。
 

スウェット素材のカーディガンやスラックス、ショーツ、サンダルなどのアイテム展開やこれまで以上のビッグシルエット、そしてモノトーンのパキッとした色合いから中間色のリラックスした温かな色合いがかなり増えている。
 

ニュースでご存知の通りヨーロッパはロックダウンが激しく情勢としては日本より遥かに厳しいのが現状
外出規制がすごく厳しく家にこもらなければいけない。
 

そんな状況のヨーロッパ諸国のファッションに対する需要は、関係者に話を聞くとやはりリラックスウェアにシフトしているようです。
日本ではそれほど規制が厳しくないからリラックスウェアにがっつりと踏み込めていないところがあるけれど、パリやミラノは何度もロックダウンを繰り返しており

「家の中で洋服を楽しんで気分を上げたい」「ライフスタイルをバージョンアップしたい」

ということでルームウェアやリラックスウェア、そして部屋着+散歩着のようなワンマイルウェアの需要がすごく強くなっている現状がある。
 


 

そういうわけで今回のユニクロUもゆったりしたサイズ感のアイテムやスウェット、ジャージ素材の提案などリラックスという点にフィーチャーされているのだと思います。
 

そしてファッションを牽引しているのはいまだヨーロッパであり、パリコレクションとミラノコレクションの影響力は絶大でトレンドの原点でもある。
そのことを考えると、日本も徐々にヨーロッパ諸国のトレンドを受けてリラックスフィットが増えてくるでしょう
 

流れとしてはマルジェラやルイヴィトン、ディオールなどヨーロッパのハイブランドが欧州の需要に押されてリラックスフィットの方向に進む。
それが日本に伝わってきて日本のファッショニスタたちがリラックスウェアのアイテムを着用しだし、徐々にリラックスウェアが浸透してトレンドが広がってくる。
こうしてリラックスフィットや暖かみを感じる中間色の提案、ゆったりした柔らかいコットンやスウェット、ジャージ素材などが今後どんどん増えていくことが予想されます。
 

洋服で気分を盛り上げる心理

 

コロナ禍によるファッションの変化2つ目は

デザインフル、カラフルなアイテムが増えていく
 

これは歴史が証明していますが、基本的にファッショントレンドは景気や社会情勢が大きく反映されます
そもそも文化とは現実の補完作用をもたらすもの。
仕事で溜まった疲れやストレスを趣味のギターで晴らすなど、現実世界の補完機能があるからこそ文化はマスに支えられている面がある。
 

これはファッションも同じで
不景気ならカラフルでデザインフルなものが売れ、好景気ならモノトーンや落ち着いたシンプルなものが売れる
んです。
 


 

不景気や社会情勢が不安定なときにまで黒やグレーなどの色を使うと気分が落ち込むでしょう。
もちろんメンズのトレンドとして黒は強いけれど、それでもルイヴィトンやセリーヌのコレクションではかなり派手なカラーリングになってきています。
今回のユニクロUでもパープルやイエロー、ビタミンカラーなど刺激のある色が普段よりも多かった。
 

これはコロナ禍で社会情勢が不安定である人々の気持ちを反映しているから。
このように不景気や社会情勢が落ち込んでいるときはカラフルでデザインフルなものが流行るという特性があり、今後もそうしたアイテムが増えてくるでしょう。
 

本当の「デジタル社会」はこれから始まる

 

そしてコロナによるファッショントレンドの変化3つ目は

デジタルシフトが進みこれまでと売れるものが変わってくる
 

コロナウイルスの流行で服屋さんに買い物に行く機会が減った方がほとんどなのではないでしょうか。
実際にアパレルショップの売り上げも激減しており、今百貨店やファッションビルに行くとお客さんよりスタッフさんの数が多いくらい。
 

このように現時点で店舗の売り上げはどんどん下がっており、比例するように販売をデジタルシフト化している企業が増えている
これまで店舗販売のみだった企業がオンラインショップを開店したり、元々の通販事業を拡大させたりとデジタルシフトがどんどん進んでいます。
 

実際パリ、ミラノではバイヤーやスタイリストを集めてコレクションを見るファッションウィークがインターネット配信に切り替わり、店舗を構えず通販のみのブランドもかなり増えてきました。
 

ただこのようにデジタルシフトしていくと実は差別化がしにくくなるんです
 

これまでブランドというのは店舗展開が基本でした。
ユニクロでさえ2年前ほど前の通販比率は10%ほど。
ここ1年でかなり膨らんできたとは思うけれど、やはりお店で買う人の方が圧倒的に多いんですね。
 

デジタルシフトなんて何年も前から言われていることですが、実際はまだまだ足踏みしている業界も多い
例えば本。紙よりも電子の方が売れている書籍って実はものすごくレアなんです。
それは基本的にベストセラーが紙の本から生まれるから。
紙の本が本屋さんでヒットして話題になると追随し電子書籍化するという形。
 

実際に本が好きな方なら言わずもがなですが・・・紙とデジタルが同時に発売することって実はあまりないんです。
紙の本が先に発売されて数週間後に電子書籍が出るパターンの方が圧倒的に多い。
 

なぜそうした仕組みなのかというと出版社はまず紙の本を買ってほしいから。
紙の本と電子書籍を一緒に発売すると、当然電子書籍で済ませる人が出てくるから総体的に売り上げが大きくなりにくい。
あとは紙と同時発売にして電子書籍で済ませる人が増えると本屋さんで注目されにくくなり、本を買って読む層の目に入らなくなってヒットしにくい。
 

ものすごいヒット商品は別として中規模クラスのものは基本的に紙の本を販売した後で電子書籍を出すのが一般的。
それくらいまだまだアナログ市場は強いんです。
 


 

そして洋服もまさにそうなんです。
実際はまだまだ店舗で買う人の方が圧倒的に多い。
これまでは店舗販売が主軸で通販はあくまで補助的な構造でしたが・・・昨今店舗販売が難しくなってきている。すると強制的にデジタルシフトして通販の割合が増えてくる。
 

今までブランド側は店舗に高いお金をかけて内装を作り良い重機を使うなど様々な手法で世界観や特別感、付加価値などを提案してきました
何の変哲もないヘインズのTシャツがドン・キホーテで2,000円だと高く感じるのにアローズで2,000円だとすごく安いと感じる。
それは付加価値を演出できているから。
店舗がしっかりと作り込まれていて内装にお金をかけ、販売員さんはしっかりと丁寧に提案や対応をしてくれる。
 

一方でドンキホーテはワゴンの中に商品をドカッと重ねて殴り書きのPOPが置いてある。
それは安売り店だから当然のことですが、同じ2,000円のヘインズTシャツでも感じ方が全然違う。
これまで店舗販売ではこうした付加価値の演出ができていたんです。
 

しかしデジタルシフトによって通販比率が格段に上がっていくと商品の見え方がどれも同じになってしまう
最近ではStoresやBASEなどのサービスを使えば美しいテンプレートのオンラインショップが誰でもタダで作れるし、iphoneで十分綺麗な商品写真が撮れる。
これまでは莫大な資本の元にして店舗内装を演出し付加価値をつけてきたけれど、デジタルならフォトショップを使えば素材の粗などはいくらでもごまかせる。
 

これまでなら店舗の作り込みというのはある程度お金をかけないと容易にできることではなかった。
しかしデジタルシフトが進むことで商品写真のクオリティなんてコスト0でいくらでも上げられるからとことん差別化がしにくくなるというわけ。
 

ではこれから売るためにどう差別化していけばいいのかというと、まず1つは価格競争に勝つこと。ただこれは絶対に限界が出てくるしユニクロなどの大資本でないと勝ち残るのは厳しい。
 

ではどうすればいいかというと例えば感情に訴えかけるストーリー性のある商品が今後売れていくと予想しています。
 


Photo by https://www.prada.com/content/dam/pradanux_products/1/1BZ/1BZ811/5ECOF0002/1BZ811_5ECO_F0002_V_OTO_MDLA.png/_jcr_content/renditions/cq5dam.web.white.800.1000.webp
 

大きな流れの1つとしてはサステナブル。
プラダの「Re-Nylon」というコレクションは100%再生可能な循環型ナイロンを使ったアイテム展開をしています。
つまりこのナイロンを使ったアイテムを買って、必要なくなりリサイクルに出したらこのナイロンを100%使ってまた別の商品が作られるわけ。
 

このようにサステナブルは感情に訴えかけるストーリー性をつけやすい。
自分の単純な趣味嗜好で購入している洋服が地球に優しい、無駄がないと言われると買うときの後押し、つまり付加価値になるでしょう。
そういうわけで今後サステナブルは良い悪いを別にして増えていくと思います。
なぜかというと地球環境へのアプローチとしてはもちろん、付加価値をつけて売りやすいというビジネス的な目線があるから。
 

あとはやはりインフルエンサーなど母体となるコミュニティがある商品はやはり強い
インフルエンサーはすでに自分のファンを抱えていて、そのコミュニティに対して販売していくわけだから当然売れますよね。
ファンにとってはそのインフルエンサーが手掛けていること自体が付加価値になるし、その人に対する信頼=商品への信頼になるから当然売れる。
そういうわけでインフルエンサーは今後もっと需要が高くなると思います。
 

世の中には様々な白Tシャツがあるけれど、結局ブランドの違いでしかないでしょう。
写真はいくらでも綺麗にできるから
「通販サイトの写真を見る限りあのブランドの白Tもこっちのブランドの白Tも同じだな」
と思われて差別化ができなくなってくる。
そう考えると今後差別化できる付加価値をつけるのはインフルエンサーが一番簡単。
だからアパレルのショップスタッフは自分でSNSをやり10、20人でもファンがいればそこに対して何か商品のアプローチをして収入の柱を増やした方が良いと思いますね。
 

あとデジタルシフト化して売れる商品としては特別な機能性など非常にわかりやすい付加価値のついた商品
 



 

例えば「XROSS D(クロスディー)」というブランドでは、最大53℃までの温度調節をスマホでできるマウンテンパーカーを展開しています。
スマホにアプリを入れてマウンテンパーカーと連動させると、エアコンのつまみ感覚で簡単に温度を上げられる。
薄手のマウンテンパーカでも温度調節をすれば十分暖かいし、暑いときは温度調節機能をオフにすれば普通のマウンテンパーカとして使える。
 

こうした機能性は本当に分かりやすいでしょう。
ただのマウンテンパーカーではなくスマホで温度調節できるという購買に対する合理的な理由がある。
他にも「AddElm(アドエルム)」というブランドでは人体生理学を元に開発された身体パフォーマンスが上がる素材が使われています。
こうした非常にわかりやすい付加価値があれば話は簡単ですね。
 

もちろんコロナが落ち着いて店舗の需要が高まればまた話は変わってくると思いますが・・・少なくとも今の状態が続きデジタルシフトが進んでいくと綺麗な形の素材が良いTシャツというだけでは売れなくなってくるでしょう。
 

これから売れるものは価格競争に勝つか、それとも何かしらの付加価値が存在するか。
その付加価値はストーリー性なのか、それとのインフルエンサーやコミュニティの後押しなのか、合理的な機能性なのか。
こうした要素がなければ戦っていけない時代になっていくと思います。
 

ということで今回はコロナ禍でファッションがシフトしていくのかについてお話ししました。

 

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