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今回は「ジルサンダー」について学びましょう。
歴史を掘り下げつつどんなブランドでどう成長して世界に広まっていったのかを解説します。
ジルサンダー立ち上げからブランド退任まで
Photo by https://www.uniqlo.com/plusj/20fw/common/imgs/thumb/thumb-about.webp?1605172261026
まずジルサンダーはドイツ生まれで人名でもありブランド名でもあります。
誤解を生むかもしれませんが、ドイツ人というと職人気質でこだわりの強く頑固であるというイメージが強い。
例えばドイツのブランドを語る上で外せない「メルセデスベンツ」。
日本では派手な車というイメージが強いかもしれませんが、実はメルセデスベンツの車のキーカラーはグレー。
そしてデザインはあまり装飾感がなくシンプルで無機質、機能性重視なのが特徴です。
あとは時計のブランドである「IWC」。
こちらも代表的なモデルのポルトギーゼを始め、驚くほどシンプルなデザイン。
このようにドイツ人は職人気質で質実剛健、無骨で本当にシンプルなブランドが多いのが特徴です。
そしてジルサンダーもその例に漏れず質実剛健の塊。
ご存じない方もいるかもしれませんが、ジルサンダーは実は女性。頑固で職人気質こだわりが強くて曲げないことから「鉄の女」とも呼ばれています。
そんなジルサンダーはデビュー当時の70年代から今も変わらず本当にシンプルなデザインがメインで無地でスタンダードなアイテムが多いことが特徴です。
Photo by https://www.fashion-press.net/img/news/57136/jilsander_2020aw_003.jpg
さてこのジルサンダー、ブランドの立ち上げ当初はこのシンプルさが仇となり苦戦を強いられました。
時は1970~80年代。当時はクロードモンタナやティエリーミュグレーなど、色とりどりのきらびやかで装飾に富んだものがファッションにおいて好まれる時代でした。
なのでミニマルデザインの象徴のようなジルサンダーはなかなか受け入れられなかった。
特筆すべきはジルサンダーがスタートに選んだのはパリコレクションがだったこと。
パリとミラノは世界の2大コレクションとされていますが、パリは華やかで新しく芸術性の高いものを好みます。
例えば破壊的で革新的なデザインが特徴のコムデギャルソンはパリコレクション出身。
ジャケットを燃やしたり胸元にスナップボタンをたくさん付けたりなど、本当にアバンギャルドで前衛的なものが多いことがパリコレクションの特徴です。
一方でミラノコレクションは割とフォーマル。
例えばミラノ出身のジョルジオアルマーニはジャケットやスラックスなどのスーツスタイルが多い。
このようにシンプルでフォーマルライク、クラシカルでオーセンティックなものを好むのがミラノコレクションの特徴です。
革新的なものを好むパリと伝統的なものを好むミラノ。この2つのうちジルサンダーがデビューに選んだのはパリコレクションでした。
パリコレクションは華やかで革新的なものを好む。そして70~80年代当時は装飾的なブランドが支持されていたので、ジルサンダーのシンプルさはなかなか受け入れてもらえなかった。
そこでジルサンダーは拠点をミラノに移すことに。
このことが功を奏し、ミラノでかなりヒットして海外展開が強化されフランクフルトでの上場まで果たします。
このミラノコレクションの後、ジルサンダーは世界に名を轟かすことになりますが・・・その後1990年代、ジルサンダーは大資本に買収されてしまいます。
昨今ではルイヴィトンやディオール、セリーヌ、フェンディなど名だたるハイブランドもすべて、LVMHグループやケリンググループなどの大資本に買収されその中でモノを作るのが基本です。
そしてジルサンダーもその例に漏れずプラダグループに買収されます。
ここで事件が起こるんですね。
プラダグループ傘下に入ったジルサンダーは、グループと揉めてジルサンダーのデザイナーを退任してしまいます。
なぜジルサンダーはプラダグループと揉めたのか。
「鉄の女」と呼ばれたジルサンダーは、プラダグループの「素材を変えてコストを下げよう」という提案に我慢ができなかった。
そしてプラダグループと決裂しブランドを去ることになります。
ユニクロの大偉業「+J」コレクションの発表
実はジルサンダーがプラダグループを抜けたタイミングで声をかけたのが、我らが日本が誇るユニクロ。
2009年、ユニクロはジルサンダーとのコラボライン「+J」コレクションを発表します。
これが大ヒットしたわけですが、実はここがユニクロの転換点だったのではないかと私は思っています。
2009年以前のユニクロは変わり始めてはいましたが、まだまだ日本の小さい量販店のブランドで安かろう悪かろうなイメージがありました。
特に我々アパレルの世界では「ユニクロを着ているなんてダサい」「そんな安いもの着てられない」という風潮がまだ根強かった。
Photo by https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/corp/press-release/upload_img/20090708_name.jpg
しかし2009年の+Jコレクションにより、その価値観は粉々に破壊されます。
今でも忘れませんが、発売前にユニクロに行列ができたんですよ。
そしてそこに並んでいた人、行列を作っていたのはアパレルの人間だったんです。
アパレルの人間は着こなしが特徴的なので、同業だとパッと見てすぐにわかるんですね。
今までユニクロをバカにしていたアパレルの人間が発売前にユニクロに並ぶ。
これは革命的なことでした。
なぜ2009年からアパレルの人間がユニクロを買いだしたのか。これはコラボの相手がジルサンダーだったからなんです。
ジルサンダーはプラダグループからの「素材を変えてコストを下げよう」という提案に我慢できず辞めていきました。
それだけ素材にも職人的な強いこだわりを持つジルサンダーが安物の象徴であるユニクロと組んだ。
普通に考えたらそんなことはあり得ない。あのジルサンダーがいくらお金を積まれたからって量販店の安物素材で満足するわけがない。
でもジルサンダーはユニクロと契約を結びました。
ということはユニクロがジルサンダーに認められるレベルになっていると証明されたようなもの。
このタイミングから我々アパレルの人間は、ユニクロをバカにするのがカッコ悪くなったんです。
だって自分たちよりもっともっと厳しくシビアに素材を見ているアパレルの世界では天井人のジルサンダーが認めてるのに、私たちが「ユニクロなんて着ねーよ」なんて言うと自分に審美眼がないと言っているのと同じことでしょう。
というわけでこの+Jコレクションでユニクロはガラッと変わりました。
最も素材に厳しいジルサンダーを自分のところへ引き寄せることで、ユニクロはクリエイションがいかに優れているかを暗に表明したんですね。
これはユニクロの歴史的な快挙だと私は思っています。
そして+Jコレクションは大成功し何度か再販を繰り返すことになりました。
本人退任後のブランド「ジルサンダー」としての歩み
ジルサンダー本人の歴史はここまで。
ここからはブランドのジルサンダーについて説明していきます。
ジルサンダー本人の退任後、ブランド・ジルサンダーのデザイナーには2005年にラフシモンズが就任します。
ラフシモンズは就任以前まではロックや少年性を意識した非常に革新的なコレクションを展開していました。
例えばファッションショーでプロのモデルを使わず、ラフシモンズがスカウトした素人を使ったり、会場に駐車場のガレージを選んだり、ハイブランドにも関わらずロックやパンクなデザインを取り入れたり。
そういった少年性や音楽性とリンクしているちょっと変わった前衛的なブランドだった。
そんなラフシモンズがシンプル路線に転換したのはジルサンダーに就任した2005年頃。
その頃のコレクションから明らかに色味やデザイン、シルエットが落ち着き大人っぽい印象に変わり、それはジルサンダーの影響だと言われてます。
ラフシモンズと言う革新的で前衛的なブランドがジルサンダーの文化に触れることを契機に自身のクリエーションが変化する。
つまりラフシモンズという強い強烈な個性を持ったデザイナーを変えてしまうぐらい、ジルサンダーには魅力があったと言っても過言ではないと思います。
ラフシモンズ体制のジルサンダーもかなり人気がありましたが、2014年にデザイナーを退任。
その後新しくジルサンダーのデザイナーに就任したのがルーク・ルーシーメイヤー夫妻。
奥さんのルーシーメイヤーは、ディオールのデザイナーをやっていたときのラフシモンズの元で働いていた経験があります。
他にもマークジェイコブスがデザイナーをやっていたときのルイヴィトンにも在籍しており、生粋のハイブランド出身。ラグジュアリーブランドの象徴のような世界で育っていったのがルーシーメイヤーです。
対して旦那さんのルークメイヤーは実はストリートブランドの代名詞シュプリームのヘッドデザイナーでした。
これすごい面白いと思いませんか。
ラグジュアリーファッションで育ったルーシーメイヤーとストリートファッションで育ったルークメイヤー。
ラグジュアリーとストリートの2人が一緒にジルサンダーのデザイナーを担っているんです。
Photo by https://res.fashionsnap.com/image/upload/q_auto,w_440/asset/collection/images/2017/01/louisvuitton_17aw-001.jpg
3年前くらいのルイヴィトンとシュプリームのコラボレーション。
これはファッション史にとって歴史的な転換点でした。
ルイヴィトンというラグジュアリーの象徴とも言える伝統と格式あるブランドが、シュプリームというストリートファッションの中で立ち上がったブランドを認めてタッグを組んだのは本当に歴史的なこと。
このことがジルサンダーでも起きているわけですね。
どこかストリートライクなリラックスしたシルエットや素材感がありながら、ラグジュアリーで上品な昔ながらのジルサンダーのスタイルが織り交ざっている。これがストリートで育ったルークとラグジュアリーで育ったルーシー、2人で生み出される今のジルサンダーのスタイルなわけです。
ファッションでは時代が移るごとに様々なトレンドが生まれました。
そして洋服というのは正直やり尽くした感がある。
人間が手と頭と足を通して着るという条件の元で作られる洋服には、そろそろデザインの限界きているんですね。
それゆえ異なる要素をミックスさせるという方法でしか新しい価値観を生み出せない。
というわけで今のファッショントレンドの流れとしてミクスチャー文化が台頭してきています。
で、これはちょっと面白い説明なのですが、ファッションと音楽はずーっと長いことリンクしてきている。
例えばコムデギャルソンがスーツスタイルをビリビリに破いたりした革新的なコレクションを行った時代に、音楽ではパンクスが台頭してきた。
パンクスとはギターをぶっ壊したり騒音を音楽だと言ったり、これまでの古典的な音楽を1回ぶち壊そうという破壊的な衝動の中から生まれた音楽のこと。
そうした現象が音楽の世界でもファッションの世界でも同時多発的に起こったわけです。
そして今の時代は音楽、ファッション共にミクスチャーの文化だと思っています。
ファッションではルイヴィトンとシュプリーム、ルーシーとルーク、ストリートとラグジュアリーが組んだ通り、今までバラバラだった要素をミックスして新しい価値観を生み出そうとしているのが今のトレンドの流れ。
では音楽はどうなのか。ここ10年でDJはすっかり市民権を得ましたよね。
10年以上前は「DJなんて他人の音楽を繋ぎ合わせてるだけじゃねーか」と思われていましたが、今ではクラブ文化がどんどん盛り上がりDJというポジションが認められ、めちゃくちゃにお金を稼いでいる。
このようにミクスチャーに価値が感じてお金が払える時代になってきているわけです。
今でも音楽とファッションはまだまだリンクしており、ミックスの文化によりDJが市民権を得たのと同様、ファッションでもストリートとラグジュアリーを筆頭に様々な要素を繋ぎ合わせて新しい価値を生み出そうという潮流が訪れている。
そういうわけでブランド・ジルサンダーが今のファッショントレンドを牽引しているのはミクスチャーの文化をルーシー・ルーク夫妻が担っているから。
まさに今の時代のトレンドを引っ張っていけるドレスとカジュアル、ラグジュアリーとストリートの両方の視点を持っているからこそ、新しい価値を生み出せるブランドとして認知されているわけですね。
ということで今回はジルサンダーについてご紹介しました。こうした知識を頭に入れておくと、ブランドやトレンドへの見方も変わると思うので、是非参考にしてみてください。
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