服を着るならこんなふうに

洋服はいつ捨てるべきなのか?

 

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私が企画監修する漫画「服を着るならこんなふうに」最新話が更新されました。
今回は「服の捨て時&リメイク」のお話。

シンプルな内容ではあるのですが、なかなか深い話。
ちょっと補足が必要ですのでここで書いておきます。

 

服は持っているだけでお金がかかっている

 

 

洋服を好きになると当然のごとく服の量が増えていきます。
しかしながら国土の狭い日本、物が増えても気にならない広〜いお家に住んでいる人はそうそう多くはありません。賃貸であれば占有面積全てに毎月の家賃が発生しているわけですから、「服の保存場所」にもお金がかかっていると言えます。つまり「袖を通さないのに捨てない服」が貯まれば貯まるだけ「家賃分損をしている」とも言えるでしょう。

 

・・・「着ない服は持っているだけで損」

そんな風に言われると断捨離な気分になってくるでしょう??

 

つまらない映画を2時間観続けるか?

 

 

自著でも書いておりますが「サンクコスト」という概念があります。
元々は投資用語で「回収不能な資産」を示す言葉です。

映画などでよく例えられるのですが・・・

たとえば1500円払って映画を観るとして
開始30分で「これは明らかに駄作だ、時間の無駄だ」と判断できたとして


・・・あなたは映画館から出ますか?

それとも「せっかくお金を払ったのだから」とこのまま2時間我慢して観続けますか?

 

この場合、既に支払っている1500円が「サンクコスト」にあたります。
この資金は回収不能です。映画の内容が面白かろうとつまらなかろうと、天変地異が起こっても回収は不可能です。

 

回収不能にも関わらず「もったいないから」「せっかく払ったのだから」と考えて2時間観続ける人は、「悪い」と言うつもりは一切ないですが、少なくとも「合理的」とは言えないでしょう。だってもう回収不能な資産なのだから「もったいない」のはどちらかといえば無駄に過ごす残りの上映時間です。もちろん大逆転で後半から面白くなれば話は別ですが、確率で言えばそれは低いわけで。さらに1500円はどうやっても返ってこないわけですから・・・

「つまらない映画を見て過ごす2時間」を選ぶのか「30分だけ犠牲にして、残りの1時間半は有意義に過ごす」のか、と考えれば明らかに前者の方が時間という資産を無駄にしているわけですから非合理的です。

 

「もったいないから」と考える方が実はもったいないという話、これが「サンクコスト(埋没資産)」です。

 

サンクコストは機会損失も生んでしまう

 

洋服もこれと同じことが言えます。
「せっかく買ったのだから、捨てる(売る)のはもったいない」
「買ったばかりなのだから、捨てる(売る)のはもったいない」

・・・いやいや、ちょっと待ってください。既に代金は支払っているわけで、もう回収不能です。買ってはみたものの家で実際に合わせてみると「なんだかイマイチだったなあ・・・」と感じてしまった。そんな半端な満足度のものを、着ないのにいつまでもとっておく方がもったいないと思いませんか??合理的に考えれば上述の通り保存にもお金がかかっているわけですから・・・「もったいない」と考える方がもったいない事をしているわけです。

 

もっと言えばサンクコストは機会損失を生む原因にもなります。

例えば着ないのにもったいないからと取ってある「カーキのカーゴパンツ」があれば・・・ショッピングの際に良いデザインの「カーキのカーゴパンツ」と巡り合っても、「そういえば同じようなの持ってるからなあ」と諦めてしまうかもしれません。着てもいないのに「機会損失」を生んでいるわけです。

 

「サンクコスト」が貴方のオシャレを阻害している話。

 

服の寿命は「耐久性」ではなく「あなた」が決めている

 

 

また「この洋服は何年持つのか?」「トレンド的にこの洋服は長く使えるのか?」などよく気にしがちですが・・・冷静に考えて3年以上着ている服ってワードローブの中に何枚ありますか??

 

どこかのリサーチ会社が調べていましたが、「同じ洋服を3年以上使うこと」は極めて稀だそうです。外出着ともなれば尚更でしょう。ご自分のワードローブを調べてみてください、50着くらいあるとすればおそらくその中で3年以上の長生きさんは2,3枚くらいなものでしょう?しかもそれらはおそらく「スタメン」からは外れているはずです。

 

もちろんレザーや高級ウールなど大事に大事に長く使うものはあるでしょうが、残酷なことに多くの人は「愛着と価格は比例」します。これは「モノの良さ」などから来るものではなく「覚悟」だと思います。何故なら衣類の世界は一般的に安価なものの方が耐久性が高く、高級品ほど脆いからです。「耐久性が高いから長く愛着を持って使う」という論はデタラメであり幻想です。

 

実は洋服は「高級品であるほど長持ちしない」って知ってますか?

 

いささか残念なことでもあるのですが・・・「愛着と価格は比例」します。それこそ「サンクコスト」ではあるのですが・・・「高いお金を払ったから長く大事に使ってあげよう」という心理が働くのでしょう。安物〜中価格帯の寿命は「耐久性」ではなく「あなた」が決めているのです。
そしてその多くは3年以内であると断言できます。

 

洋服に求めるものは「機能」ではなく「美しさ」

 

 

では服はいつ捨てるのが正しいのか?

それはもう本編でも述べている通り「テンションが上がらなくなったら」が一番正しいでしょう。
客観的指標としてはもちろんTシャツなどは「首が伸びすぎた」とか「パンツの膝抜けが酷くなった」とかあるでしょうが・・・ただTシャツのネックが伸びていなくても「3年以上同じTシャツ着ますか???」という話です。「服の捨て時」は決して「耐久性」の話じゃないと思うのです。

 

 

例えば某大手メーカーは首のネックが伸びないように、ネック部分だけ形態安定のソロテックス糸を編み込んで「絶対伸びないネック」を開発中だそうです。(ソロテックス糸は加水分解も起きずほぼ劣化しない)

 

もちろん耐久性は有難いですが・・・どっちにしても多くの人が3年で買い換えているのなら「だからどうした」的な話だと思うのですよね。結局「テンション上がるか上がらないか」が服の捨て時になるのではないかと思います。だって洋服は「機能性」ではなく本質的に「美しさ」を求めて買うものなのだから。

 

もう一度花を咲かせるなら「お直し」!!

 

 

ただ捨てる前に一つ「もう一度テンションを上げる服」にさせる方法が。
着古した服を「もう一花咲かせる」方法が。

それが「お直し」です。

 

世間の多くが「お直し=裾直し」くらいしか認識していないと思いますが、実はお直しはあらゆることが可能です。

 

・チェスターコートをテーラードジャケットにする

・シャツの襟をとってノーカラーにする

・長袖を半袖にする

・スラックスをショートパンツにする

・10年前に買ったブーツカットを今風のテーパードシルエットにする

・プルオーバーニットをカーディガンにする

 

これら別に特別なお直しじゃありません。
比較的普通に対応できるものばかりです。

 

よく「お直しすると形が崩れる」などの都市伝説を唱える人がいますが、形が崩れるとは一体どういう状態のことを言うのでしょう??

例えば「裾だけを極端に細くする」なんてことは一般的には不可能です。
裾を細くしようと思えば当然その上のモモの部分にも影響が出ます。徐々にテーパードするように裾に向けて細くなるわけで「型崩れ」など起こりようもありません。「裾だけジグザグに細くする」なんて魔法みたいなこと普通はしませんし、出来ません。

 


Photo by https://img.dkgirl.com/public/5a5/c70/83a/5a5c7083a7351845308025.jpg

 

「ドルマンスリーブ」などは「身幅や肩幅は思い切り広いのに、袖は細い」みたいないびつな形ですがこれを「型崩れ」だと主張する人はいません。

もちろん体の構造に反するようなお直しをするなら別ですし「型崩れ」と言うのかもしれませんが、お直し屋さんならそれをちゃんと止めてくれます。「裾幅8cmって人間の足通らないですよ・・・?」と無茶な注文は止めてくれます。

 

もっと自由にお直しを活用して良いと私は思います。

10年前と比べて日本人の所有洋服枚数は数倍に跳ね上がっているそうです。主にファストファッションが原因ですが・・・皆昔と比べて「服を持ってる」のです。だからこそお直しをつかって今ある素材をきちんと活かすべきではないでしょうか。新しい服を買うよりも余程安くできるわけですから。

 

服は人生の断片である

 

 

「服は人生の断片である」

「服着る」の中でも指折りで良いセリフです。
サンクコストはカットするとして、他方「人生の断片」と思えるような思い出深い洋服は愛着を持ってお直しして変わらず使い続けてあげるのもオススメです。

 

あの時デートで使った洋服、
合格採用が決まった時の洋服、
人生の転機に着用してた服、

そんな服は「タンスに眠らせておかない」で、お直ししてまた愛してあげると良いでしょう。

 

そして「服を着るならこんなふうに」次回から新展開突入です。
是非お楽しみに・・・!!

 

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