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デザイナーズブランドの敗北
洋服は「原価勝負」の世界ではありません。ダイヤモンドや金など値段の大部分が素材原価で左右されるようなものであれば「原価勝負」なところがありますが・・・洋服は「生産背景」次第で値段は落とせます。
洋服は企画から生産に至るまで驚くほど複雑な工程を踏んでいます。「ブランドがデザインを起こして工場で生産する」というざっくりとした認識が多いでしょうが、生地は生地屋さんが作るものだし、縫製は縫製工場が行うものだし、デザイン画から設計図である「パターン」を引くことも外部のパタンナーさんに委託したり、ブランドの営業活動宣伝活動をプレス会社に外注するところも一般的です。生地屋さんの生地だって、そもそも綿を摘んで糸を生成する会社から素材を買って生産しているのです。直営店じゃなければ「販売委託」や「卸し売り」となるわけでさらに会社をまたぎます。
デザイナーからエンドユーザーの手元にわたるまで何社またいでいるのか分かりませんね。この世の中の生産物は基本的に「人の手がかかればかかるほど高くなる」ものです。ファッションブランドはとかっく「洋服は高い!」「綿花の原価がいくらだかわかってんのか?ぼったくりすぎだろ!」と批判を浴びるものですが、実は洋服ほど「安くしようがない製品」もないくらい、複雑な工程で生産されているのです。
また工業化しにくい業界でもあります。トレンドや流行は移り変わるという性質があるため、同じデザインのジャケットでも今年と来年では微妙に形を変える必要があります。また同じデザインを2年も3年も続ければ確実に飽きられてしまいます。そうなると生産背景を整えて工業化することがなかなか難しい。毎年変わるがために「人の手で作る」ことが求められます。3Dプリンターなどで大きな革命が起きる可能性は孕んでいますが今の所はまだまだ「人の手」に頼らざるをえないでしょう。
しかしH&MやZARAなどのファストファッションブランドは全てを自社で賄うSPA業態で大きな価格改革を起こしました。昨年のユニクロのヒット商品「スーピマコットンシリーズ」などもそうです。希少素材であるスーピマコットンTシャツ、数年前の市場では1万円近くするような素材・形・デザインのものもユニクロが2枚で900円程度で出してきました。いつもデザイナーズブランドの洋服ばかり着ているという人も、あまりのクオリティの高さについつい手を出してしまったのではないでしょうか。
「高いものが良い」という原価信仰もあります。アウトドアウェアやスポーツウェアなど開発に多額の費用を費やしているものに関してはまだまだファストファッションが勝てないジャンルではあります。・・・が、上述のデザイナーズブランドなどに関しては生産背景次第で同質のものでも単価を極端に安くもできるのです。
「いやデザイナーズブランドはデザインの優位性がある!」
とも思うでしょうが、これも残念ながら最適化された生産背景の前では無価値です。
上述した通りですが従来型の「洋服を作る」という行為は時間と手間がかかるもの。他社が出してきた優良なデザインを「コピーしよう」と思ってもクイックに動くことはできませんでした。生地の手配、縫製工場のラインの空きなどなど思うようにはいきません。
しかしH&Mなど極度に効率化されたブランドは「すぐにコピーする」ことが出来ます。そうなると「デザイナーズブランドの優位性」はありません。もっともファストファッションは限られた客層に向けたデザイナーズと異なり、数多くの人を対象にしたマス層向けデザインにしなければならないため、「デザイナーズブランドの優位性」が完全に消えたわけではありませんが。
しかし「ユニクロアンドルメール」の様にクリエイティブなデザイナーとファストファッションが組んで「カプセルコレクション」などを数量限定で展開すればその優位性はますます薄れていきます。先端のデザインをマス向けの生産背景を流用して作るのですから。洋服は商業ですから、価格で戦わざるを得ません。そうなるとデザイナーズブランドは敗北を喫するでしょう。
「物」ではなく「着こなし」で差別化する時代
しかしながら、「だから皆でファストファッションを同じ様に着よう」とも別に思っていません。
何故ならファッションは「差別化」にこそ価値があるからです。他人と違うスタイル、他人と違う着こなし、他人と違うアイテムなどで価値を創造していくのがファッションです。だからこそ本サイトでも「アメカジが席巻している日本市場だからこそ、ドレスライクな構築をしましょう」と語るわけですね。
差別化の鍵は一体どこにあるのか?
まず一つは「着こなし」にあります。これは本サイトで何度も語っていること、「ドレスとカジュアルのバランス」という抽象概念を用いて説明しています。「日本人特有の性質、日本人特有のファッション志向」から脱却することで街で目に付く「オシャレ」を実現する論理です。
※「ドレスとカジュアルのバランス」に関して未見の方は下記記事を一読ください。メンズファッションの大原則が理解できます。
【初めてこのサイトに来た人へ】最も早くオシャレになる方法とは?メンズファッションで気を配るべき一つの答えとは?
この論理の優れたところは「抽象概念」というところです。メルマガでは「マストバイ」など具体的なアイテム指南も行っていますが、概念や論理自体は「抽象性」のあるものです。抽象性のある概念・・・つまり「方程式」の様なものです。数学の方程式はあらゆる数式にあてはめて使うものです。複雑怪奇な数式を一つの概念やルールに照らし合わせてみることで、解法を見つけ出すのです。「抽象概念」とは「あてはめて使うもの」であり、逆に「具体性」とは「これとこれをこのように使いなさい」という細かな指示指定を含むものです。
つまり「ドレスとカジュアルのバランス」という抽象概念を用いれば、全く違うジャンルや全く違うテイストでオシャレを実現できるというわけです。例えば「アメカジ」でオシャレを作ることだって実は出来ます。
「服は人によって似合うものが違うのだから、法則などないはずだ」と声高に主張する一部の業界人もいますが、それこそがアパレルを萎縮させ、着こなしの工夫を後退させることだということに気づいてほしいのです。そしてそういった方のほとんどが上述の抽象性と具体性を理解できていません。抽象概念はあらゆるものにあてはめて100人いれば100通りの具体性を生み出すことができる「方程式」です。個性をつぶすものではありません。
逆に方程式や説明書すらない、100%自由なジャンルって存在するでしょうか?芸術ですら論理があります。商業のファッションにおいては「客観的な見た目」がもっとも重要視されます。人の見た目、人の感覚は法則でまとめられないほど千差万別なものでしょうか。そうではないはずです。事実、街では「あの人おしゃれだよね」「そうだよね」という会話が成り立っています。もしバラバラの価値観があるのであれば、そういった会話は成り立たないはずです。
そしてそういった人の道標となるのが抽象的な「方程式」と、入り口なり得る具体的な「マストバイ」です。抽象概念とはえてして理解しにくいものですから、具体性のある「マストバイ」が必要となります。ここを理解して行動している業界関係者はおらず、これが業界の萎縮につながっていると考えています。
おそらくファストファッションが普及し続ければオシャレはどんどん進化しにくくなるでしょう。生物の進化で重要なのは「多様性」です。多様性の中から良いものや悪いものが生まれ、淘汰され、洗練されていくものです。寡占状態の市場の中では進化と発展は生まれにくいはずです。
寡占状態でもオシャレを促進する方法が、まず「着こなし」です。画一的なカタログ的な着こなし方ではなく、差別化した論理などを用いて着こなしを洗練されていく、文化を高めていくことが必要なのです。そのためには入り口や教科書が必要です。それを「個性があるから」と投げっぱなしにしているのが今の現状でありアパレル最大の問題点だと思います。
多様性を求めて発展すべきデザイナーズブランド
そしてまた着こなしと同様に「差別化」や「文化の発展」においてデザイナーズブランドはもっと頑張るべきです。未だにスタンダードな服ばかりを高値で作り続けているブランドが多いですが、あっというまに淘汰されるでしょう。「ユニクロルメールのシャツが素晴らしい」とまとめ買いしているファッション業界人は多いですが、その反面自社ではそれにも劣るようなものを高値で売り続けているダブルスタンダードが存在するのです。
市場にない価値あるものを生産することがビジネスを成り立たせる基本です。価値のないものは見向きされなくなるはずです。「ユニクロのシャツはすごい」それはそれで認めた上で、デザイナーズブランドは自社にしか出せない価値を追求するべきです。素材なのかデザインなのかギミックなのかブランディングなのか分かりませんが(それは各ブランドが考えるべきことです)、上述の通り「生物の進化の鍵は多様性」です。アパレルが萎縮しない様にファストファッションで寡占された状態を少しでも変えなければいけない「社会的な役目」を持っているのがデザイナーズブランドとも言えますね。
今様々なものが効率化・最適化に向かい「画一的な無個性社会」が形成されつつあります。インターネットによる情報化は「多様性」を生むかと思いきや、方向を一にすることに作用してしまい、革命的な発展進化を許さない時代となってしまいました。
先進先端を好むアパレルですらこの有様です。私はネクストジェネレーションを生み出すべく、ファッション人口を増やすこと、論理を解き少しでも間口を広げること、また「論理の使い方」から多様性を生み多くの上級オシャレさんを増やすことを考えています。そうして「おしゃれに興味ある」人口を増やし、またその中で突出した人達が新たな革命発展を促してくれるはずです。
「洋服が売れない時代になった・・・」
愚痴を言うのは簡単です。しかしアパレルメーカーの仕事は愚痴を言うことではないはずです。スタンダードの時代は終わったのです。改めて、デザイナーズブランドが本当の意味で活きる時代が来たのです。洗練を重ねた革命的な提案を行うブランドだけに、もうすぐ業界は淘汰されるはずです。
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10年以上かけて構築した論理であり絶対の自信があります。
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