シャツ編

ボタンダウンシャツとは何か?歴史や成り立ちからアメリカンカジュアルを考察する

 

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ユニクロでも人気商品の「ボタンダウンシャツ」。商品名に当たり前の様に記載され、雑誌でもとりたてて説明をしてくれませんので「ボタンダウンって何のこと?」と思っている方も多いでしょう。

今日は「ボタンダウンシャツ」からアメリカンカジュアルの話まで、歴史などを踏まえて語ります。

 

そもそもボタンダウンシャツとは何か?

 

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Photo by http://item.shopping.c.yimg.jp/i/l/skyjack_1720-1

 

「ボタンダウンシャツ」とは写真の様に襟先にボタンがついている仕様のことを指します。シャツそのものの素材や形を意味する言葉ではなく、あくまで「襟(カラー)」の話ですね。なので正確には「ボタンダウンカラー・シャツ(ボタンで留める襟のシャツ)」が正しいです。

 

何故「ボタン”ダウン”」なのか?それは襟がめくれている状態をup、めくれていない下がっている状態をdownと捉えているからです。

ボタンによって襟がdownしているから「ボタンダウン」な訳ですね。

 

 

元々は1900年頃にアメリカで誕生したのが「ボタンダウンシャツ」。その当時は「ポロカラーシャツ」という名称で販売されていました。発明したのはブルックスブラザーズの創業者の孫であるジョン・ブルックス。ジョンはイギリスのポロ競技の試合を観戦している際にこの仕様を思いつきました。当時のポロ競技用のユニフォームは顔に襟が当たらない様にボタンがついていたのです。

 

伝統的な装飾などよりも、実用性を求めるアメリカらしい発想で生まれたものですね。「襟って邪魔だよねー」的な。ボタンダウンが普及する前もアメリカでは「ディタッチドカラー」という襟の形状が流行しています。

 

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Photo by http://pds.exblog.jp/pds/1/200902/27/84/c0181284_22531698.jpg

 

その名前の通り「取り外し可能な襟」。今もそうですが、シャツはきっちりとプレスしないとだらしなく野暮ったくみえるもの。襟はアイロンがけの際にとりわけ邪魔くさいですし、にもかかわらず襟は視線を集める目立つ部分のためちょっとシワが入るだけでも気になってしまうものです。

 

そこで考案されたのが「ディタッチドカラー」。1820年の発売当時は「アローカラー」など呼ばれていた様ですが、「邪魔だから襟だけ外して、これだけ糊づけすりゃいいじゃん」とはなんともアメリカ人らしい発想です。

 

 

ドレスアイテムにカジュアル要素を入れたアメリカ人の功績

 

しかしこの「ディタッチドカラー」は見た目を損ねない機能性の高さから世界中に広まりました。その後また「ボタンダウンカラー」でシャツに革命を与えるのだから、アメリカ人は偉大です。凝り固まった伝統服に次々に実用性を加えていったのです。

 

特に「ボタンダウンカラー」は「ディタッチドカラー」と異なり、実用性を付与しただけでなく、見た目にも革命を起こしました。色々と言われていますが、私は「ボタンダウンカラー」の最大の功績は「ネクタイをつけなくてもサマにみえる」というところではないかと思います。

 

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Photo by http://pds.exblog.jp/pds/1/201405/18/68/e0198668_1925927.jpg

 

「ロール」と呼ばれる独特の曲線を描く襟はレギュラーカラーにはないものです。レギュラーカラーはネクタイを締めなければ横に広がってしまいますが、ボタンダウンは襟がコンパクトに収まります。ニットなどを上に重ねる着こなしはアイビースタイルの基本でもありますが、そんな着こなしにはやはりボタンダウンがお似合いです。レギュラーカラーをニットに重ねると襟が「こんにちは!」とぴょこっと出てきてしまいますからね。

 

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Photo by http://cdn.thumb.shop-list.com/res/up/shoplist/shp/__basethum900__/menzstyle/syouhin/pc/pc10/03-54231-329-04-m.jpg
※「こんにちは」しているシャツ

 

だからこそ私はメルマガなどでシャツをオススメする際に「襟が小さいものが良い」といい続けています。ボタンダウンではないレギュラーカラーならばなおさら。襟が大きいとノータイの際に横に広がりだらしなく見えますし、ニットを重ねた時の「こんにちは現象」も起きやすいです。かといってボタンダウンではカジュアルすぎる。そんな需要を拾ってくれるのが「小さい襟のレギュラーカラー」です。KnowerMag的に(というかモードの世界は皆そうですが)小さめ襟のレギュラーカラーがオススメです。

 

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Photo by http://img5.zozo.jp/goodsimages/224/8307224/8307224B_1_D_500.jpg
※小さい襟のレギュラーカラーシャツ

 

 

少し「ボタンダウン」に話を戻しましょう。上述の説明の通り、伝統服に機能性をつけたことで「新しい服」を作れたわけですが、当然「礼服を崩したもの」でカジュアルな仕様です。未だに「面接や商談の時はボタンダウンはやめろ」などありますが、礼服としては少しくだけた印象です。ボタンや縫製糸や切り替えやポケットなど、「デザイン」が付与されたものは基本的にカジュアルです。ジャケットのパッチポケットなどと同じですね。

デザインはシンプルであるほどドレスに、装飾的であるほどカジュアルになる宿命です。

 

 

しかし「ドレスシャツにカジュアル感をつけた」からこそ当時の市場に広く受け入れられたのかもしれません。「カッチリしている礼服だけど、ラフな雰囲気がある」というまさに本サイトKnowerMagで言うところの「ドレスとカジュアルのバランス」ですね。

 

※「ドレスとカジュアルのバランス」について未読の方はこちらをお読みください
【初めてこのサイトに来た人へ】最も早くオシャレになる方法とは?メンズファッションで気を配るべき一つの答えとは?

 

ボタンダウンシャツは瞬く間に市場に広がりました。当時を代表するハリウッドスター、クラークゲーブルが映画「或る夜の出来事」内にてボタンダウンを着用し、爆発的な売上を記録したそうです。アンディ・ウォーホルのボタンダウン好きなども有名ですね。著名人達の着用が後押しとなり、大きく世間に広がっていったという話。

 

 

合理主義的発想からカジュアル化を進めたアメリカ

 

洋服はヨーロッパの文化ではありますが、近代アメリカ人の合理主義的発想によるものも大きいところがあります。とりわけカジュアル服に関してはアメリカ人の貢献は偉大なものでしょう。デニムだってそうですね。元々はフランス・ニーム地方の織物
がルーツではありますが(ドゥ・ニーム、と聞くとフランス語っぽいでしょう)、それをジーンズまで押し上げたのはアメリカ人です。労働者用に頑丈なパンツが必要で、馬用に使っていたリベットを打ち込めば縫製がダメにならないんじゃないか?と荒っぽいことを考えて実践するあたり、ヨーロッパ人には出来ない発想です。

 

軍服もそうですね。軍服は意外にも伝統や格式を重んじる世界です。フランス軍はナポレオン時代からの伝統であるトリコロールカラー(赤・白・青)を第一次大戦初期でも活用していました。赤いパンツに青いコートがフランス軍服の基本であり、戦場では非常に目立ち兵士からは不満の声もあったそうです。

 

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Photo by http://images.china.cn/attachement/jpg/site1004/20140428/001ec949fb1b14c82bcb01.jpg

 

アメリカ軍は、伝統的な装飾の「勤務服」と機能性を最重要視する「戦闘服」と軍服を明確に2つに分け、今日の戦闘服の礎を作りました。ここにも合理的なアメリカ人的発想の寄与があるわけです。

 

 

ドレスなどの格式ばった洋服に、少し機能性を付与してカジュアルに崩すアメリカンカジュアルの発想。私はしっかりとプレスしたレギュラーカラーが好きですが、スラックスにプレスしたレギュラーカラーを合わせると少し「キメすぎ」に感じることがあります。「ドレスとカジュアルのバランス」ですね。

そんな時にプレスをしていないシワのあるボタンダウンシャツなどを合わせると、スラックスでもキメすぎにならず程よいカジュアル感が加わります。ドレスもカジュアルもどちらも街着にとっては重要な要素であり、このバランスこそが大事です。合理性からカジュアル服を作り広めてくれたアメリカンカジュアルに敬意を表しつつも、一方に偏りすぎないバランス良いコーディネートを目指したいものです。

 

 

 
 

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